今日、日本では「3組に1組の夫婦が離婚する」ということが言われたりします。これ、本当でしょうか。
統計資料(厚生労働省「人口動態統計」)に基づいてみると、平成27年の、日本における日本人の婚姻件数は63万5156件ですが、離婚件数は22万6215件です。1年間における婚姻件数と離婚件数を単純に比較すると、離婚率は35.62%。たしかに「3組に1組」の割合になるのかもしれません。
ちなみに、30年前の昭和60年では離婚率22.65%(婚姻件数73万5850件、離婚件数16万6640件)、昭和42年まで遡ると離婚率は8.76%(婚姻件数95万3096件、離婚件数8万3478件)です。50年前は「10組に1組」以下であった離婚が、現代では「3組に1組」にまで増えているということが言えるのかもしれません。

このように、もはや特別なことではなくなったのかもしれない「離婚」ですが、離婚を検討する際には、どのようなことを考えればよいのでしょうか。
「そもそも離婚はできるのか?」「慰謝料はもらえるものなのか?」
「家や財産はどうなるのか?」「子供と一緒に生活することはできるのか?」
「年金や退職金はどうなるのか?」「裁判所で、配偶者と争わなければならないのか?」
など、様々な疑問が出てくると思います。
ただ、これらをまとめると、①離婚すること自体について、②お金(財産)のことについて、③子供のことについて、という3点に集約されます。そして、それらの事項について、自分にとって何が一番大事なことか、という視点から、優先順位をつけて進めていくことが大事です

あなたが「離婚をしたい」と考えた場合に、最もスムーズに離婚ができるのは、配偶者も「離婚をしたい」と考えていて、離婚をすることについて合意が成立する場合です(「協議離婚」と言います。)。また、当事者同士の話し合いでは合意に至らなくても、裁判所における話し合い(調停)の結果、離婚をすることについて合意が成立する場合もあります(「調停離婚」と言います。)。
ただ、離婚をすること自体について話し合いで合意ができない場合には、裁判所に離婚の訴えを起こして、裁判所の判決で離婚を認めてもらう必要があります(「裁判離婚」と言います。)。離婚を認めてもらうには、法律上定められた「離婚事由」が存在することを主張し、証明する必要があります。
離婚をしたいと考えたときには、まずこの流れをイメージして、その段階毎に適切な主張をし、時には配偶者と交渉をしなければなりません。以外にも、子供がいる場合の「養育費」、離婚に至るまでに支払ってもらう「婚姻費用」など、離婚には、決めなければならないお金(財産)の問題がたくさんあります。

離婚をすることが決まっても、どのような条件で離婚するのか、ということについて争いが生じることも少なくありません。夫婦は基本的に共同して生活を行い、様々な財産(預金、不動産、金融商品のようなプラスの財産も、借金のようなマイナスの財産も含みます。)を共有していますので、特に、これらの財産をどう分配するのか、という「財産分与」については重要な問題となります。
また、一方当事者が離婚の原因を作った場合には、「慰謝料」の支払いが必要になる場合があります(必ず発生する訳ではなく、常に男性が女性に対して支払うというものでもありません。)。
これ以外にも、子供がいる場合の「養育費」、離婚に至るまでに支払ってもらう「婚姻費用」など、離婚には、決めなければならないお金(財産)の問題がたくさんあります。
夫婦に子どもがいる場合、離婚後にどちらが子どもの親権を持ったり、養育したりするのかという大きな問題があります。親権等を持たないことになる当事者も、親子の関係が無くなる訳ではないので、面会交流のことについても決めなければなりません。
親権については争いになることも多くありますが、裁判所は、離婚の原因等よりも「子の福祉」という観点を重視して、それぞれの養育環境等の実態面を調べた上で決定します。ですので、親権を保持したい場合には、自身が子どもの親権を持ち、養育していくことが子どものために最善であるということを、具体的に主張していく必要があります。
なお、統計的には女性が親権を持つことが多いですが、子どもの年齢等、様々な要素によっては、男性が親権を持つことも少なくありません。


近年、いわゆる「熟年離婚」の割合が増えています。特に40歳以上の中高年層の離婚が増えていますが、熟年離婚の場合、長期間の婚姻生活の後の離婚となることが多いので、財産分与の対象も大きく、複雑になります。退職金や年金の分け方がポイントになることも少なくありません。

離婚に際して、男性側(夫側)が、子供の親権を確保したい、というご相談が増えています。司法統計によれば、離婚の際に子供がいる場合、子どもの親権を取るのは女性が約9割、男性は約1割であり、男性が親権を確保するのは困難であるとされています。
しかし最近では、「イクメン」などという言葉が流行することからも分かるように、「夫が仕事、妻が家庭」というような役割分担や、家族そのものの在り方が変わってきています。子供の年齢や、夫婦双方の実家との関わり方などの環境にもよるのですが、男性でも、これまでやこれからの子供との関わり方、家事・育児に対する関与状況、そして子供に対する愛情などについて上手くアピールすることにより、親権を取ることができる環境になってきていると考えられます。

離婚をするためには、上述のとおり、多くのことを考え、主張していく必要があります。その中では、時には嫌な思いをしたり、悲しい気持ちになったりすることもあると思います。ノーサイド法律事務所の弁護士は、依頼者の利益を最大化するのはもちろんですが、依頼者のその時々の気持ちに寄り添って、晴れやかな未来を実現するためのお手伝いをしますので、安心してご相談ください!

山﨑 健介 Kensuke Yamazaki
2008年に弁護士登録し、米国西海岸に本拠地を持つO’Melveny & Myers LLPの日本事務所である、外国法共同事業オメルベニー・アンド・マイヤーズ法律事務所に入所。企業法務、M&A等の業務に加え、訴訟及び交渉実務の経験も積む。
2012年4月に独立し、ノーサイド法律事務所を設立。以来、企業法務分野に加え、訴訟案件にて培った交渉力や裁判実務能力を活かして離婚・相続を中心とした一般民事法務に多く携わる。